【寄稿】データ分析にハマった経緯とその楽しさ、心がけている事
「宇都宮大学 コラボレーション・フェア」で有限会社マイティー千葉重でデータサイエンス事業(主として観光分野)の事業統括をしている堀江智史さんとお知り合いになりました。隣のブースだったので、データサイエンス事業の技術的、事業展開上の苦労話で盛り上がりました。この縁をイベントだけで終わらせるのは名残惜しいので、厚かましくも当ブログへの寄稿を原稿料0円でお願いしていましたが、この度、寄稿文を受け取りました。
堀江さんは、データサイエンティストの醍醐味が、「複雑に絡まったものが、ある瞬間にスッとほどける感覚」にあると言います。私も、この感覚を感じたことが幾度もあり、非常に共感できました。
前置きはこのくらいにして、早速、データサイエンティストとして、新規事業を率いている堀江さんのリアルな活動に触れてみましょう!
寄稿文 データ分析にハマった経緯とその楽しさ、心がけている事
宮城・東北の豊かな観光資源を、データの力で呼び覚ましたい。そんな想いを胸に日々活動している、観光データマーケターの立場から寄稿させていただきます。
観光とデータ。一見すると正反対にあるようにも思えるこの二つが掛け合わさることで、地域にどのような変化が生まれるのか。これまでの歩みと、現場で感じてきた「データ分析の仕事」についてお話しします。
①なぜ、データ分析の事業/仕事を行うようになったのですか?
私のキャリア、そして会社の原点は、1954年に宮城県で創業した一軒の酒屋です。
弊社代表の祖父の代に始まった酒屋は、地域の暮らしを支える存在でした。その後、代表の父(現在の会長)の代でスーパーマーケットへと業態を変え、現在の代表である三代目の代からは、地酒を全国に届けるためのECサイト運営へと広がっていきました。
私がデータ分析に本格的に関わるようになったのは、このEC事業がきっかけです。
実店舗と違って、ECはとにかく数字がシビアです。
商品を並べただけでは売れないし、広告を出しても検証しなければお金が消えるだけ。「なんとなく良さそう」は、まったく通用しません。
気づけば、アクセス解析や売上データを独学で追いかける日々でした。
どこでユーザーが離脱しているのか
検索の裏にどんな本音が隠れているのか
打った施策が本当に利益につながっているのか
そうやって試行錯誤を繰り返すうちに、一つの確信が生まれました。
データを見ずに意思決定するのは、ほぼギャンブルだということです。
ただ、その一方で、地元の観光に目を向けたとき、かなり強い違和感を覚えました。
東北には、本当に素晴らしい資源があります。
自然も、食も、文化も、どれを取っても魅力的です。
なのに、それが「届いていない」。
あるいは届いていたとしても、やり方がズレていて、効果の薄いプロモーションに予算が投じられている。さらに言えば、現場のデジタル化は驚くほど進んでいませんでした。
宿帳は紙、顧客データは段ボールの中。
一度来てくれたお客様に、次の来訪を促すことすら難しい。
この状況を見たとき、「もったいない」という言葉では足りない感情がありました。
観光業は長年、「経験と勘」に支えられてきた業界です。
それ自体は尊重すべき価値ですが、変化のスピードが速い今、それだけでは厳しい場面も増えています。
だったら、自分たちがECで培ったデータの考え方を、ここに持ち込めないか。
そう思ったのが、今の仕事の出発点です。
データという客観的な材料があれば、行政や事業者など立場の異なる関係者同士でも、納得感を持って議論ができます。私はデータ分析を単なる集計ではなく、「合意形成のための言語」として捉えるようになりました。
②データ分析の楽しさはどのような事ですか?
この仕事の醍醐味は、複雑に絡まったものが、ある瞬間にスッとほどける感覚にあります。
例えば、ある地域の祭りの話です。
歴史もあり、地元の人にとっては誇り。でも観光としては収益化できず、存続すら危うい状態でした。「外から人を呼ぶなんてとんでもない」という空気もあり、正面からの提案はなかなか通りません。
そこで、データをもとに丁寧に対話を重ねました。
SNSの反応や検索動向を見ると、実は外からの関心はかなり高い。
さらに、体験商品として設計した場合の収支をシミュレーションし、「こうすれば祭りに還元できる」という形に落とし込む。
その上で、どこまでなら外部の人が入っても無理がないか、行動データをもとに整理する。
派手な話ではないですが、こうした材料を一つずつ積み上げていくと、少しずつ対話が進みます。こうした材料を積み重ねていく中で、少しずつ理解が広がり、最終的には体験商品として形にすることができました。
実施後、「やってよかった」と言っていただけたときの喜びは忘れられません。データが人の気持ちを動かし、伝統を支える力になったと実感した瞬間でした。データが人の気持ちを動かすこともあるのだ、と。
もう一つの面白さは、「点が線になる瞬間」です。
仮説を立てて、データで裏付けを探し、可視化する。
すると、頭の中でバラバラだった情報が、急に一本の線としてつながる瞬間がありました。
以前、学会で訪れる外国人の動きを調べた時のことです。
調べてみると、彼らは学会の前後に特定の行動を取り、決まったキーワードで情報を探している。
これを現場に持っていくと、担当者の「なんとなくそう思っていた」が、「やっぱりそうだった」に変わりました。そこから具体的な施策が一気に生まれていく。この連鎖が、個人的にはたまらなく面白い。
データって冷たいものだと思われがちですが、深く見ると、そこに人の行動や感情がちゃんと表れているんですよね。データの奥には、人の動きや感情が隠れています。それを見つけ出せるのが、この仕事の醍醐味だと感じています。
③データ分析で、心がけていることはどのような事ですか?
プロとして現場に立つ際、私が自分で意識している「泥臭いルール」がいくつかあります。
どんなにビッグデータを扱っていても、画面の中だけで答えを出さないようにしています。
実際にその観光地の坂道を歩き、現地の食堂でご飯を食べ、現場がどのようなところなのかを肌で感じるようにしています。
データで「滞在時間が短い」と出たとき、それが「つまらない」からなのか、それとも「歩道が狭くてゆっくり歩けない」からなのか。それは現場に行かなければ絶対に分かりません。この差は、現地に立たないと分からないと思います。
次に、「だから何か」を考え抜くこと。
分析結果を、具体的な行動につなげるところまで責任を持って提案することを心掛けています。
「分析しました、結果はこうでした」で終わるレポートに価値はありません。
「この数字が出た。だから来月までに、ここをこうしましょう」。
ここまで提案して初めて、分析は価値を持ちます。クライアントが求めているのは「過去の解説」ではなく「結果を出すために何をしたらよいか」であると実感しているからです。
三つ目は、専門用語をかみ砕くこと。誰にでも伝わる形で説明することを大切にしています。
現場にはデータの専門家ではないけれど、その土地を本気で良くしたい人がいます。
その人たちに伝わらなければ意味がないのです。
あと個人的に大事にしているのが、小さな違和感を放置しないこと。
「この数字だけおかしいな」と思ったときに深掘りすると、意外と重要なヒントが隠れていることが多いです。
④データサイエンティストを目指す方々へ一言
データサイエンスのスキルは、間違いなく強力です。
ただ、それ自体が目的になってしまうと、少しもったいないと思います。
大事なのは、そのスキルで何を解決したいのかだと思います。
自分の場合は、「地域の課題をどうにかしたい」というところに、たまたまデータがハマっただけです。
私自身、自分の役割を単なる分析者ではなく、課題を整理するプランナーであり、現場を動かすディレクターだと考えています。
だからこそ、データサイエンスに何か一つ掛け合わせてみる。
医療でも、教育でも、観光でもいい。
その“掛け算”が、自分の強みになるではないかと思います。
自分はこれからも、データと地域をつなぐ仕事を続けていきます。
勘だけに頼る時代から、データを共通言語にする時代へ。
その変化の途中にいられるのは、正直かなり面白いタイミングだなと感じています。
データの先には、必ず「人」がいます。
そのことを忘れなければ、この仕事はもっと広がっていくはずです。
ぜひ、そんな楽しい仕事を目指して、地域を、日本を良くしていく人が増えればうれしいです。
堀江さん、寄稿の依頼を忘れずにありがとうございました!改めて、堀江さんの話は深いなぁと感じました。
猫のタローも仙台で活動ができればいいなと思った次第です。まずは、現場がどのようなところなのかを肌で感じることから始めましょうか…。
コメント
コメントを投稿